集英社新書より川嶋朗著「心もからだも「冷え」が万病のもと」という本がでました。大変参考になるのでお勧めします。
著者は西洋医学の医者ですが、東洋医学にも関心を持ち、東洋医学の考え方も治療に取り入れられている方です。著者の考え方は非常に一貫していて、患者が治ればその治療法は正しいというもので、東洋医学のみならず、もし患者が霊能力者によって治ったのであれば(霊治療が患者の思い込みであったとしても)それはそれで治ったのだから治療効果があったのだ、と肯定します。患者本位の考え方に好感が持てます。
著書の中に、重要なキーワードを見つけました。それは「湯治(とうじ)」という言葉です。一般的に湯治というと、温泉場に行って温泉の効能を期待すべく、長期間にわたって温泉に入ることを指します。しかし良く読んでみると湯治という言葉では入る風呂を「温泉」とは限定していません。あくまで「温泉治」ではなく「湯治」です。お湯ならなんでも良い訳です。
温泉そのものにも効能はありますが、それに加えてお湯に体を浸けてからだを温めること自体にも効能があるといえるのではないでしょうか。湯治は、普段の生活から離れて、温泉場でリラックスしながら、長期間にわたってからだを温めることに意味があるのだと思います。冷えをとるために体をあたためることが必要と著者は強調しています。体を温めることそのこと自体が「治療」です。
臨床の経験より、現代人は体が冷えていると言います。特に男性も冷えが強いといいます。メタボリックシンドロームも、キレる子供も冷えが原因といいます。
寒くなればセーターやコートを着たりします。手袋もはめます。ところが、足元までなかなか気が届きません。足元だけは、寒くても、靴下は常に一枚しか履きません。これって合理的でないと思いませんか? 恐らく、冷えすぎて、足の感覚が鈍くなってしまっているのだと思います。
もっと自分の体に関心をもってもいいのではないでしょうか。体調がわるくなったらすぐに医者にかかる。熱がでればすぐに薬を飲む。このように、他人や物(薬)に依存する気持ちが強くなると自分自身の存在が自分で自覚できなくなります。医者にかかることを否定するわけではありませんが、自分で自分の体の調子をよく感じてから、医者にかかるかどうかを自分で考えるという習慣をつけるとよいのではないかと思います。
他人本位の考え方をやめるようにすれば、自分の足元が冷えていることを自覚できるようになるのではないでしょうか。自分で自分の体を考えると自ずと足元にも意識が届くようになると思います。また、自分自身が持っている自然治癒力に関心を持つようになると思います。