シルク製品の製造工程

シルク製品の製造工程について

蚕(かいこ)が作る繭(まゆ)を原料にした絹製品の製造工程について詳しくご説明します。
製造工程はどこの国でも同じです。
シルク製品の製造工程には、毒性化学物質や重金属が製品に混入する余地はありませんのでご安心下さい。

蚕(カイコ)の成長

最初は小さなアリのようですが、桑の葉を食べて次第に大きくなります。
何回か脱皮するあいだに、桑の葉を20~25g(桑の葉およそ20枚分)食べて大きくなり、成長すると体内にある絹糸腺は絹物質でいっぱいになります。
成長したカイコの体重は孵化したときから約一万倍になります。

桑に農薬が使われていることは考えられません。
なぜなら、農薬とは植物に虫が付かないようにするもの(虫が食べれば死んでしまうようにするもの)であるからです。
食品スーパーに虫食い状態の野菜を並べると見栄えが悪く、消費者から敬遠されがちですが、「虫食い」は農薬を使っていない安全な野菜の証拠であることは、広く知られるようになってきました。
桑の葉も同じで、カイコが桑の葉を食べるということは、安全な葉を食べているということです。

カイコの吐く糸

繭

カイコは完全に成長すると、糸を吐いて繭(まゆ)を作り始めます。
健康なカイコは、糸を切断することなく2日から3日にわたり、1,500mもの長さの糸を吐き続けます。
繭の中のカイコは、糸を吐き終わって2日から3日後に脱皮して蛹(さなぎ)となります。

カイコが作る繭糸は大変細く、1万mの重さが3g足らずです。繭糸の断面は左右2本の絹糸腺から出てきた三角形のフィブロイン(繊維状のたんぱく質で繭糸の70~80%)をセリシン(ニカワ質のタンパク質で繭糸の20~30%)が覆う形となっています。
セリシンは糊のような役割をして、吐糸するときの潤滑剤として働きます。

1本のフィブロインは、約1,000本以上の細いフィブリル繊維の集まりで、1本のフィブリルは更に細いミクロフィブリルの束からできています。
絹の柔らかさ、軽さ、温かさや光沢は、このような糸の繊細な構造によると言われています。

精錬する

糸を紡ぐ(つむぐ)前に、繭糸に付着した不純物や、フィブロインを覆っているニカワ質のセリシンを取り除く(精錬する)工程があります。
繭糸は、まず植物性油脂を原料にしたマルセル石鹸で洗浄します。
セリシンも石鹸によって一部が取り除かれます。
さらに、有用微生物が入っている発酵槽の中に繭糸を浸け、有用微生物が作るたんぱく質分解酵素でセリシンをさらに取り除き、繊維のフィブロインを残します。

精錬工程は上記の通り、植物性油脂を原料としたマルセル石鹸による精錬、および、微生物を利用した酵素精錬というものです。
微生物は生き物であり、もし毒性のものがこの工程に混入すれば微生物は死んでしまい、精錬できません。紡績工場では、長年の経験をもとに、たんぱく質を分解する微生物を大切に育てて保存しています。

糸をつむぐ

当店で扱う製品の素材となる絹紡糸(けんぼうし)は、長繊維の絹糸を取り出した後に残る、短繊維(くずまゆ)を束ね、ねじりをかけて作らます。
短繊維の繊維長は35~75mm。絹紡紬糸(けんぼうちゅうし)と呼ばれるものの繊維長は30~40mm以下です。
「くずまゆ」と、名前の印象は悪いのですが、絹には変わりありません。この紡績工程は紡績機による機械的な工程です。

くずまゆをつむいで作った糸は、中に空気の層があり、長繊維の生糸よりも温かく、また落ち着いた光沢があります。
尚、ショーツには、50~70mmと比較的長い繊維長のくずまゆを厳選して紡ぎ、その後、さっと火に通して毛羽立ちを落とした高級絹紡糸が使われています。

製品を作る

絹の特性を活かすために無漂白、無染色の生成(きなり)の糸を使って、製品を編み上げます。
この工程も編み機による機械的な工程です。
機械油(潤滑油)が製品に付着する場合がありますが、ご心配の方は一度洗濯されてからご着用いただけると安心です。

(参考資料:独立行政法人農畜産業振興機構「シルク情報」)