絹(シルク)の特性について
天然繊維には、いくら科学が発達しても化学繊維では得られない特性を備えています。
絹(シルク)は繭(まゆ)をほぐしてつくられたものです。
繭(まゆ)は繭の中で生きている蚕(かいこ)を外部環境から守っている天然のシェルターです。
1粒の繭(まゆ)の糸は、通常約1,300mにも及ぶ長く細い1本の糸であり、この1本の繭の糸は2本のフィブロインという、たんぱく質の繊維と、これを覆い取り巻くセリシンというたんぱく質から構成されています。
これらのたんぱく質の成分構成は人間の皮膚のたんぱく質に非常に近いものです。
また、繭(まゆ)は出口も入口もない卵の殻のような存在です。
その「殻」の厚みは1ミリ前後あり、殻は指で押しても簡単にはつぶない、思ったより頑丈なものです。
繭の中の蚕(かいこ)は、出口も入口もない繭の「殻」を通して、繭の外の世界に老廃物を排出し、一方で繭の外の世界から酸素やエネルギーを取り入れて成長します。
この繭からとれる絹には、以下のような特性があります。
(社団法人絹業協会『シルクの特性』(1)2004.9.1号・(2)2004.10.1号より抜粋)
吸湿性・放湿性 |
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人体からは1日ほぼ1リットルの水分が発散されています。 衣服には、この水分を吸収して外気に放出する機能、すなわち放湿性(通気性)が求められます。 天然繊維の中でも、絹は綿の1.3~1.5倍の吸湿性があり、放湿性も綿に遜色ない特徴をもっています。 つまり、絹は吸湿性が優れていて放湿速度が大きく、衣服内に余分な湿気が残留しないために着心地が良いのです。 また、吸湿性の大きい素材の衣服は、身体に対する外界の温度・湿度変化の影響を緩和する作用も兼ねています。 |
物質吸収性 |
絹のフィブロインは結晶領域と非結晶領域とよりなり、分子内には豊富な活性基が存在しているので、優れた物質吸収性を持っています。 例えば、ガス吸着性ではアンモニア・エチレンなどに顕著で食品の鮮度保持に効果が認められ、ビスフェノールA(環境ホルモン)も吸着するなど他の衣料素材にみられない優れた機能を有することも明らかにされています。 |
抗菌性 |
シルクは抗菌性を有するといわれています。 現時点でその効果は未だ十分に明らかにされていませんが、家蚕の笹繭や野蚕の天蚕などでは顕著な抗菌性が確認されています。 これはセリシンに含まれるフラボノール色素の存在によるものです。 |
紫外線カット性 |
絹フィブロインの紫外線吸収スペクトルをみると280nm付近に吸収極大値が現れ、220~280nmにも強い吸収が見られます。 前者はチロシンなどのアミノ酸に、後者はペプチド結合によるものとされ、シルク製品を身に付けた場合、人体に有害なUV-B・Cが吸収されて透過量が減少します。 このように紫外線を吸収して透過させない比率をカット率といい、シルクの紫外線カット率は90%前後と、ウールと並んで極めて高い数値を示すとの報告があります。 |